物流システム作り直し|数十社の荷主の違いをCSV11種で受けた(前編)

大阪でシステムの受託開発を行うSky Grid株式会社は、倉庫と運送の両方を手がける千里運輸株式会社様の物流システムを作り直しました。物流システムとは、倉庫にある荷物の数(在庫)、荷物の出し入れ、配送、そして荷主様への請求までを、まとめて管理する仕組みのことです。
この記事は前編です。担当した当社のエンジニアの永井が、新しいシステムに作り直したときの話をします。後編では、新しいシステムの中身と、出荷を止めずに切り替えた進め方、そしていまも直し続けている話をします。
先に、前編の内容を数字でまとめます。
- 荷主様の数:数十社
- 荷主様専用のCSV取り込みの型:11種類
- 荷主様ごとに切り替える設定の例:締め日2通り、保管料の計算2通り、送り状に載せる住所2通り
- CSVの書き出しにかかる時間:30分〜1時間から、1〜2分に
- 出荷指示の入力:手打ちから、ファイルの自動取り込みに
- 担当エンジニアが千里運輸様に通った頻度:ほぼ毎日
荷主様の数、書き出しの時間、出荷指示の入力、通った頻度は、永井への聞き取りによるものです。取り込みの型と設定の数は、2026年10月8日時点の新しいシステムから数えました。
物流システムを作り直す前、何に困っていたのか
困っていたのは、長く使ってきたシステムの遅さと、止まる心配でした。
千里運輸様は、大阪府摂津市に本社を置く物流会社です。1965年の創業から、荷物を運ぶ輸送と、荷物を預かる倉庫の両方を手がけてきました。大阪の北摂地域に約4,000坪の倉庫を持ち、摂津市と茨木市の営業所・倉庫のほか、福岡にも営業所があります(千里運輸様の公式サイトより)。お取引のある荷主様は数十社です。荷主とは、物流会社に荷物の保管や配送を頼む会社のことで、千里運輸様にとってのお客様にあたります。
千里運輸様は長年、運送業向けの既製品のシステムに手を加えながら使っていました。既製品とは、多くの会社が同じものを使う前提で作られた、出来合いのシステムのことです(パッケージとも呼ばれます)。パソコンに入れて使う形のシステムで、会社の中に置いたサーバーで動いていました。
長く使ううちにサーバーの劣化が進み、動作も遅くなっていました。データをCSVファイルで書き出すのに、30分から1時間かかることもあったそうです。
そこで当社はまず、社内のサーバーで動いていたシステムを、そのままクラウド(インターネットの向こう側にあるサーバー)に移して、止まる心配をなくしました。そのうえで、ブラウザで使える新しいシステムに作り直しています。
既製品を手直しして使い続けるか、作り直すか
千里運輸様の場合は、作り直しを選びました。前のシステムと新しいシステムを並べると、違いは次のとおりです。
| 比べるところ | 前のシステム | 新しいシステム |
|---|---|---|
| 作り方 | 運送業向けの既製品に、手を加えて使う | 千里運輸様の業務に合わせて、当社が作り直す |
| 動かす場所 | 会社の中のサーバー | クラウド |
| 使い方 | パソコンに入れて使う | ブラウザで使う |
| CSVの書き出し | 30分〜1時間かかることがあった | 1〜2分 |
| 機能 | 多くそろっているが、使われていない機能もあった | 使う機能だけに絞った |
| 出荷指示の入力 | 手で打ち込む | ファイルから自動で取り込む |
| 請求 | 手作業でExcelにまとめる | システムから請求書を出す |
永井は、物流の仕組みの中心は多くの会社に共通する王道の進め方で、会社ごとの違いはそこに加わる「少しの足し」だと話します。千里運輸様では、その少しの足しが、荷主様ごとに数十社分ありました。それを受け止める仕組みを、新しいシステムの真ん中に置いています。
荷主ごとにやり方が違うとき、システムはどう対応したのか
荷主様ごとのやり方は、1つにはまとめていません。まとめられるところは運用を少し変えていただき、どうしても変えられないところは、システムの中で分けて対応しました。
出荷指示のCSVが荷主ごとに違うときは、専用の型を作った
出荷指示とは、「この荷物を、ここへ、いつまでに出して」という荷主様からの指示のことです。CSVファイルで届きますが、その形には、先方の都合で変えられないものがありました。そこで、取り込むCSVの形を荷主様専用に分けています。いま、専用の取り込みの型は11種類あります。
ピッキングリスト(倉庫の棚から荷物を取り出すための一覧)などの帳票も、こだわりのある荷主様が多く、分けて対応しました。
締め日や保管料が荷主ごとに違うときは、設定で切り替える
ほかの違いは、荷主様ごとの設定としてシステムに登録しています。設定を選ぶと、処理が自動で切り替わる仕組みです。
| 設定 | 選べるもの |
|---|---|
| 締め日 | 20日締め/月末締め |
| 保管料の計算 | 個建て(商品の単価 × 個数)/才建て(荷物の体積 × 単価) |
| 送り状に載せる住所 | 荷主様の住所/倉庫の住所 |
料金も同じ仕組みです。保管料のほか、容器の料金、ロット(製造単位)の読み取りの料金など、荷主様ごとに決まりのある料金を登録しておき、まとめて更新もできます。
システムに合わせてそろえてもらったもの、手作業で残したもの
運用をそろえていただいたものもあります。画面の操作感は、前のシステムに戻してほしいという声もありましたが、担当者の方ごとに意見が分かれていました。そこで、新しく決めた仕様に慣れていただくようお願いしています。運送会社を登録する画面も、使い方を1つにそろえました。
いまも手作業で残っているのは、入荷の記録の入力です。入荷の情報はPDFやFAXで届くため、目で見て打ち込んでいます。紙の文字を機械で読み取る仕組み(OCR)は、今回は使っていません。
使っていない機能は、作らなかった
新しいシステムは、前のシステムのやり方を引き継ぐことを基本にしたうえで、使われていない機能は作らないと決めて、機能を絞っています。
決め方はヒアリングです。「これって使ってますか」と一つずつ確かめ、誰も使っていない機能は外しました。1人しか使っていない機能は、別の機能で代わりができるなら、そちらを使っていただくようにしています。
CSVの書き出しは、30分〜1時間から1〜2分に
作り直して、まず変わったのは待ち時間です。サーバーの劣化による遅さがなくなり、30分から1時間かかっていたCSVの書き出しは、いまは1〜2分で終わります。
出荷の作業も楽になりました。これまで手で打ち込んでいた出荷指示を、ファイルから自動で取り込めるようになったからです。
請求の作業も変わりました。以前は、請求の内容を手作業でExcelにまとめていました。いまは、運賃のほか、保管料や入出庫の作業料も含めて、システムから請求書を出せます。締め日が荷主様ごとに違っても、設定どおりに処理されます。
現場の方からは、「使いやすくなった」という声を直接いただいています。
担当エンジニアは、ほぼ毎日現場に通った
この作り直しで永井が一番こだわったのは、ほぼ毎日、現場に通い続けることでした。
「とにかくもう本当に現場に聞くしかなかった」
千里運輸様は、永井のための席まで用意してくださいました。永井は担当者の方のところを順に回り、「運用をしている横で私は作業ずっとしていました」と言います。実際の作業を横で見ながら、その場で感じたこと、困っていること、こうしたいという要望を聞いていきました。
同じことで困っている物流会社は、何から始めればいいか
まず業務を分析することです。永井は、業務を分析してからシステムに落とし込めば、その会社ならではのシステムになると考えています。
もう1つ、永井が自分の苦労をふまえて勧めるのは、業務の流れをそろえることです。荷主様ごとに業務の流れが分かれるほど、業務は複雑になり、システムも難しく、費用もかさみ、ほころびが出やすくなります。だから、「業務フローはできる限り統一するという考え方を持つことをお勧めします」。
ご相談をいただくときに、最初に見せていただきたいのは、いまの運用の流れです。
「倉庫管理のやり方は、会社によって千差万別です。運用の流れが見えると、話が早いです」
後編では、新しいシステムの中身と、出荷を止めずに切り替えた進め方の話をします。後編は近日公開の予定です。
千里運輸様の事例は、物流基幹システム(WMS・TMS)のリプレイス ― 千里運輸株式会社様でも紹介しています。
Sky Grid株式会社は、大阪のシステム開発会社です。お客様の業務に合わせてシステムを作る受託開発を中心に、生成AIを使ったシステム開発、AI/DX研修などを行っています。倉庫と運送の両方を手がける物流会社のシステムも、千里運輸様のように作り直しから担当しています。物流システムの作り直しについてのご相談は、お問い合わせフォームからどうぞ。
この記事は2026年10月時点の内容です。


