物流システム作り直し|出荷を止めずに切り替え、動かしながら直す(後編)

#導入事例
物流システム作り直し|出荷を止めずに切り替え、動かしながら直す(後編)

大阪でシステムの受託開発を行うSky Grid株式会社は、千里運輸株式会社様の物流システムを作り直し、いまも直し続けています。前編では、荷主様ごとに違うやり方を受け止めながら作り直した話をしました。後編では、新しいシステムの中身と、古いシステムからの切り替え、そして毎日の業務を止めずにシステムを直し続けている話をします。担当は前編と同じ、当社のエンジニアの永井です。

前編はこちらです。物流システム作り直し|数十社の荷主の違いをCSV11種で受けた(前編)

先に、後編の内容を数字でまとめます。

  • 新しいシステムの画面:47(倉庫の仕事と運送の仕事を1つのシステムで扱う)
  • 切り替えのあいだに出荷が止まった回数:0回
  • 新旧の両方に入力した期間:担当者ごとに1か月
  • 動きを確かめるために用意しているテスト:約5,700件
  • いま不具合の連絡が来る頻度:月に1回あるかないか

画面とテストの数は、2026年10月8日時点の新しいシステムから数えました。それ以外は、永井への聞き取りによるものです。

倉庫と運送を、1つのシステムで扱えるのか

扱えます。千里運輸様の新しいシステムは、倉庫の管理(WMSと呼ばれる仕組み)と、運送の実績・運賃の管理を、1つのシステムで扱っています。配車(どのトラックにどの荷物を積むか)を組むのは人で、システムには組んだあとの実績を登録します。

画面は全部で47あり、倉庫の仕事が13、倉庫の登録情報が7、運送の仕事が12、運送の登録情報が9、その他が6です。仕事の流れに沿うと、次の画面を順に使います。荷主様の指示を取り込んでから請求までが、1つのシステムの中でつながっています。

仕事の流れ使う画面
荷主様から指示が来る出庫実績登録(出荷指示の取り込み)、取込フォーマット
入荷入庫実績登録
在庫在庫一覧、棚番移動
出荷出荷ピッキング、出荷指示書、路線配車更新
送り状送り状・荷札発行
運賃配車実績登録、配送費実績管理
請求請求処理、配送費請求

運賃の表は、運び方ごとに持っている

運賃の決め方は、運び方によって違います。そのため新しいシステムには、トラック1台を貸し切る料金、1個あたりの単価、荷物の体積あたりの料金表(才タリフ)、距離の表など、運賃のもとになる表を運び方ごとに入れています。付帯作業料は自動で計算し、待機料や燃料サーチャージは手で入力して扱えます。

複数の荷主様の荷物を1台でまとめて運ぶ共同配送にも対応しています。共同配送用の配車、送り状、仕分け表を扱う画面があり、運賃は荷主様ごとに分けて扱います。高速道路の料金(ETC)の管理や、ドライバーの手当の計算にも使っています。

自社のトラックで運ぶ分だけでなく、協力会社のトラックに運んでもらう「傭車」の分も、売上をこのシステムで管理しています。

切り替えのあいだ、出荷は止まらなかったのか

止まっていません。古いシステムから新しいシステムへの切り替えでは、全体を一度に切り替えず、千里運輸様の担当者の方ごとに、順に移っていただきました。担当者の方とは、荷主様ごとの仕事を受け持つ、千里運輸様の社員の方です。

移るあいだは、古いシステムと新しいシステムの両方に入力していただきました。この期間は、担当者の方ごとに1か月です。

この期間の請求は、古いシステムから出しました。新しいシステムでも同じ請求を出力し、金額が一致するかを突き合わせています。差が見つかったところは、データとプログラムを直してから先へ進みました。請求を確かめてから移る。この順番を守っています。

新しいシステムだけに切り替えたあとも、細かなトラブルは起きました。そのたびにその場で対応し、データをまとめて直す必要があったときも、千里運輸様の了承をいただきながら進めています。トラブルのあいだも業務は止まらず、出荷が遅れたという話も聞いていない、と永井は話しています。

一番気をつかうのは、業務を止めないこと

動いているシステムを直すとき、永井が一番気をつかっているのは、千里運輸様の業務を止めないことです。

「本社が実稼働しているので、この業務を止めないことです」

物流システムは、出荷や請求といった毎日の仕事そのものです。直した内容が原因でシステムが止まれば、送り状が出せず、荷物もトラックも動かせなくなります。だから、直すときの手順を毎回同じにしています。

壊さないために、毎回何をしているのか

直したら、画面を通しで動かして確かめてから出しています。流れは次のとおりです。

  1. 直す内容を決め、AIと一緒に作る
  2. E2Eテストを流し、結果をレポートにまとめる
  3. レポートの中身と、実際の動きを人が確かめる
  4. 問題がなければ、本番(お客様が実際に使っているシステム)に反映する

E2Eテストとは、画面を機械が通しで操作して、業務が最後まで動くかを確かめるテストです。人が一つずつ画面を触って確かめる代わりに、機械が同じ手順を何度でも正確に繰り返します。

確かめるためのテストは、全部で約5,700件用意しています。内訳は、サーバー側が約4,500件、画面の部品が約1,070件、画面を通しで操作するテストが173件です。プログラムを変えるたびに、自動でチェックが走る仕組みも入れています。

それでも、本番では思わぬところでほころびが出ることがあります。だからこそ、いろいろな角度からのテストが必要だと、永井は日々感じています。

AIが作ったものは、テストと人の目で確かめてから出す

当社はAIを使った開発をしている会社で、千里運輸様のシステムでもAIを使っています。ただし、AIが作ったものをそのまま出すことはありません。テスト結果のレポートを読み、実際の動きを確かめて、本番に出すかどうかを決めるのは永井です。

作業と判断は、次のように分けています。

  • AIに任せている作業:調査、分析、分からないところの洗い出し、計画、プログラムを書くこと、テスト
  • 永井がしている作業:お客様の要望を分析してAIに頼むこと、AIが作ったものを使うかどうかを決めること

作り直すときも、要件をシステムの言葉にかみくだいてからAIに渡し、システムを作らせました。荷主様ごとのやり方を整理するときには、プログラムの中の条件の分かれ道をAIに確かめさせ、荷主様のあいだで共通にできるところと、分けるしかないところを洗い出しています。

なお、新しいシステムの中に、AIを使った機能はありません。

変更は小さく分けて、急ぎの直しはすぐ出す

変更は小さく分けて、こまめに出しています。大きな変更を一度に入れると、本番への影響が大きくなるからです。

「小さな差分をコツコツとリリースしていくことが重要かなというふうに思います」

差分とは、一度に入れる変更のまとまりのことです。急ぎの小さな直しはすぐに出し、大きな修正は確かめるのに時間をかけます。テストだけで1週間かけることもあります。

いまは、どれくらい直しを入れているのか

不具合のご連絡は、いまは月に1回あるかないかです。新しいシステムは、使い始めてしばらくは小さな不具合が出るものです。そのたびにすぐ直して、千里運輸様にご報告してきました。

あわせて、運用のサポートもしています。日々お電話でいただくご質問に、その都度お答えしています。

動いているシステムの改修を頼むなら、何を確かめればいいか

永井の話をもとに、頼む側が確かめておくとよいことを3つにまとめます。

  1. 直したあと、何で確かめているか
  2. 変更を小さく分けて出しているか
  3. 困ったとき、電話で聞けるか

千里運輸様の事例は、物流基幹システム(WMS・TMS)のリプレイス ― 千里運輸株式会社様でも紹介しています。

Sky Grid株式会社は、大阪のシステム開発会社です。お客様の業務に合わせてシステムを作る受託開発を中心に、生成AIを使ったシステム開発、AI/DX研修などを行っています。作ったシステムを、業務を止めずに直し続けるところまで担当しています。動いているシステムの改修についてのご相談は、お問い合わせフォームからどうぞ。

この記事は2026年10月時点の内容です。

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