AIで作る資料の体裁を守らせる|Claudeのスキルで測って直させる

大阪でAI/DX研修とシステムの受託開発を行うSky Grid株式会社では、発表資料や会社として外に出す資料を、AIに当社の体裁どおりに作らせる仕組みを使っています。作ったのは広報の下村です。この記事では、その仕組みで何を測っているか、自分の会社で同じことをやるなら何から始めるかを書きます。
AIに頼むと、詰めすぎとスカスカを行ったり来たりする
AIに資料を作らせると、いらいらすることが多いんですよね。余白も、文字数も、何もかも。
たとえば、文字を詰めすぎたスライドが出てくるので「詰めすぎ」と伝えると、今度はスカスカになる。「情報が足りない」と伝えると、またみちみちに戻る。言葉で直してもらうかぎり、こういう行ったり来たりが終わりませんでした。最後はいらいらして、「もうこれでいいわ」とやめてしまうことが多かったです。
頼むのをやめて、測ることにした
そこで、言葉で頼むのをやめて、出来上がりを機械で測ることにしました。
当社では、資料作りの手順をClaudeの「スキル」にまとめています。スキル=AIに渡す手順書で、検査用のプログラムを一緒に入れておけます。
使う側は、「9月の月次報告のスライドを作って」のように頼むだけです。当社の体裁で、PowerPointとPDFの両方が出てきます。直したいときは「3枚目をグラフの型にして」のように、手順書に決めてある型の名前で指示できます。型は表紙、表、グラフ、締めなど13種類です。
資料ができたら、AI自身に検査のプログラムを走らせて、基準から外れていれば作り直させます。「すべてOK」が出るまで、人には渡しません。測っているのは、たとえば次のようなところです。
左右の余白:本文の左端は0.7インチ、表は1.35インチなど、決めた位置からずれていないか
行の間隔:文字の大きさごとに決めた間隔になっているか
上下の余白:中身のかたまりが、上下の真ん中に来ているか
埋まり具合:文字や図を置ける範囲のうち、何%が中身で埋まっているか
埋まり具合は、61〜89%を基準にしています。65%を下回ると、上下がそろっていても作りかけに見えるからです。下回ったら、まず載せる量を増やします。それでも足りなければ、AIに「この情報が足りません」と人に伝えさせます。
61〜89%は、当社の体裁の元になった資料を実際に測って出した数字です。業界の標準ではありません。
入らないときの逃げ方を先に決めておく
AIに任せていちばん困るのは、決まりに収まらないときに、その場の判断でレイアウトを崩したり、それらしい数字で埋めたりすることです。なので、収まらないときの逃げ方を先に決めています。
項目の数が型に収まらない:4件なら2×2のカードの型、5件以上なら一覧の型に変える
文字数が上限を超えた:まず短くする。無理なら型を変える。落とした情報は確認事項として人に伝える
数字が手元にない:仮の数字を入れない。そのスライドを保留にして、人に数字を求める
文字数の上限も、型ごとに決めています。たとえば表紙のタイトルは19字までです。作る前に、入るかどうかを数えさせています。
測っても、目で見ても、思わぬところがずれていた
測り始めて意外だったのは、自分が気にしていなかった数字で検査に引っかかることです。ここがずれるのか、というところがずれていました。
1つは、カードだけ、表だけで組んだスライドです。体裁どおりに作っても、埋まり具合が51〜60%にしかなりませんでした。目で見ても、AIの出力を見ても「こんなものかな」と通っていたので、測って初めて分かったことです。いまは、その型には中見出しとリード文を必ず入れるようにしています。
もう1つは、グラフの文字です。書き出したPDFを調べると、グラフの凡例と軸のラベルだけが、日本語ではなく中国語の字形になっていました。本文は日本語の字形なのに、グラフだけ別の経路で文字が置き換わっていたんです。いまは書き出したあとに、PDFの中に中国語の字形が混ざっていないかを確かめています。
目で見て気づいたずれもあります。カードの角に置いている三角の飾りです。できあがったスライドを見て、なんかずれているなと思って調べると、手順書では三角の一辺を「0.5インチ」と固定の数字で決めていました。見本はカードの高さ2.87インチに対して、三角の一辺が0.95インチ。手順書の三角は、見本の半分ほどの大きさしかなかったんです。
ずれていたのは、三角の大きさというより座標の考え方のほうでした。固定の数字で置くと、カードの高さが変わった瞬間にずれます。そこで、一辺は「カードの高さの3分の1」と計算式で決め直すよう、AIにやり直してもらいました。
検査が正しいものを見ているかも確かめる
測る仕組みを入れても、測る相手を間違えていたら意味がありません。
たとえば、PowerPointからPDFを書き出すとき、同じ名前のPDFがすでにあると、上書きに失敗することがあります。気づかないまま検査を走らせると、古いPDFを検査して「OK」が出てしまいます。なので、PDFは必ず別のフォルダに書き出してから移す、と手順書に書いています。
検査で拾えないところもあります。表の行の間隔は、いまの検査では合否を判定していません。なので、指定が抜けていても自動では見つかりません。そこは手順書に「表のセルにも行の間隔を指定する」と書いて、作る段階で防いでいます。検査が「要確認」と出した間隔は、別に見て確かめる手順にしています。
いまは中身だけを見ている
仕組みを入れて変わったのは、資料を作るたびにいらいらしなくなったことです。余白も文字数も、途中で投げ出していたところを仕組みが見てくれるので、正直かなり楽になりました。
いま私が目で見ているのは、中身だけです。デザインは仕組みに任せて、何を書くかに集中できるようになりました。
自分用のメモのような資料にも使っています。ただ、特に使ってほしいのは、発表資料や、会社として外に出す資料です。体裁がそろっていることに意味がある資料ほど、この仕組みが効くと思っています。
Claude Designとの違い
AIに会社の決まりを覚えさせる方法には、Claude Designもあります。違いは、できたものの良し悪しを誰が決めるかだと思っています。
Claude Designでも、自分が使った範囲では、色や文字の決まりを登録しておけば、その枠に沿ってある程度いいものを作ってくれます。ただ、出てきたものがいいかどうかは、画面を見て人が判断することになります。スキルは、手順書と一緒に検査のプログラムを入れておけるので、測って、基準に届かなければ作り直す、までをAIに任せられます。
形がまだ決まっていなくて、いろいろな案を並べて選びたい段階なら、Claude Designのほうが早いと思います。形が決まっていて、それを毎回同じ品質で作りたいなら、スキルです。
当社でも、窓口担当の野村がClaude Designを使って、商談のその場で提案書とデモ画面を出せるようになりました。その話は開発未経験の窓口担当が、商談のその場で提案書とデモ画面を出せるようになるまでに書いています。
こだわりがある人にこそ使ってほしい
スキルのいいところは、自分の決まりを、そのまま法律にできることだと思っています。
当社の手順書には、「この表にない色は使わない」「規定にないパターンが必要になったら、勝手に足さずに管理者に連絡する」と書いています。AIが規定と食い違うと思ったときも、勝手に変えずに「規定に従うとこうなりますが、こちらのほうが読みやすいと思います」と1行で伝えるだけ。決めるのは人です。
ここまで縛られるのは嫌だ、という人もいると思います。でも、色や余白にこだわりがあって、AIに任せるたびにもやもやしている人には、ぜひ試してほしいです。デザイナーかどうかは関係なく、こだわりがある人ほど向いています。
自分の会社でやるなら、まず見本を本気で作る
同じことを自分の会社でやるなら、私は最初に、資料のデザインを本気で作ります。
測る仕組みは、基準になる見本がないと始まりません。見本があいまいなままAIに手順を渡しても、守られたかどうかを確かめようがないからです。
表紙、グラフ、表など、使う型ごとに見本のスライドを本気で作る
AIに同じ型で作らせて、見本と測り比べ、ずれ(差分)を出す
ずれたところを、手順書と検査に足していく
当社の場合、見本は表紙やグラフなど10枚ほどでした。
当社の埋まり具合の基準(61〜89%)をそのまま持ち帰っても意味はありません。自分の会社の「これはいい出来だ」という資料を測って、自分の数字を出すところからです。
ただ、測るだけで全部が見つかるわけではありません。三角の飾りのずれは、仕組みを作っている途中に目で見て気づいたものです。仕組みができるまでは、目で見ることも欠かせませんでした。
資料作りの仕組みはnoteでも詳しく書いています。Claudeの「スキル」で資料作成を自動化した話 https://note.com/sg_151001/n/n343f5e04e4f0
Sky Grid株式会社は、大阪のAI企業です。企業向けのAI/DX研修と、お客さまの業務に合わせたシステムの受託開発を行っています。これまでの開発事例はサービス・事例の一覧で紹介しています。会社の資料をAIに体裁どおり作らせたい、検査の仕組みから作りたい、というご相談はお問い合わせフォームからどうぞ。
この記事は2026年10月時点の内容です。


